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映像四郎の百人斬り

映像四郎の百人斬り

「襲撃」

「かっぽちゃん」襲撃



 「かっぽちゃん」出現情報を入手。

 私は、急遽、ピンクタウンにとんだ。

 時刻は、午前0時03分。

 せつな系ダイアリアン「かっぽちゃん」こと「江戸川華歩」は、

 その昔「激しく惰日記」というブログ日記を書き続け、

 世に棲むM男達の、

 股間に突き刺さる「箴言の女王」としても、

 知られている。

 その「かっぽちゃん」が、どうやら、

 日ごろの憂さ晴らし、兼、暇つぶしとして、

 ピンクタウン歌舞伎町で、

 SM倶楽部の「女王様」を、

 月に一回だけ、バイトしているらしいのだ。



 先日、入手した「かぼちゃパンツ」を頭にかぶり、

 フレームの歪んだ「かっぽ眼がね」を装着し、

 人通り激しい歌舞伎町の往来に、降り立つと、

 おそれをなして、どんな客引きも、声をかけてくれない。

 あ、条令もあったのかな。

 何はともあれ、客引きなどという、三下に用はないのだ。

 Mブログの女王「かっぽちゃん」が、

 ぽんびきなどという、

 安い手段に訴えるSM倶楽部で、

 働いてるわけがないのだ。

 しかも、SMは、たいてい、秘密制に彩られている。

 歩いてたって、犬は、なかなか棒にぶつかれない。

 終電前。

 まだ、人が多い。

 私のちょっと、いっちゃってる風体などに、

 目もくれず、怒涛のごとく、人波が、流れてゆく。

 どこだ、どこにいるんだ?

 この腐敗臭の中では、

 ミルクな香りの「かぼちゃパンツ」も、

 役には立たない。

 私は、あるきながら、街の雑踏に、

 触覚を、研ぎ澄ます。

 そうだ、やはり、SMなんだから、

 こんな明るい場所、歩いてちゃダメだ。

 もっと、薄暗くて、後ろめたい路地を、

 探さなくちゃダメなんだ。

 時間の浪費を怖れた私は、暗闇を求めて走り出した。

 何といっても、月一回なのだ。

 今夜、逃したら、一ヶ月待たなくてはいけない。

 走る。

 路地をぬけ、

 ビル裏をぬけ、

 空調の室外機を飛び越え、

 ゲロをまたぎ、

 酔っ払いの倒れたオヤジをまたぎ、

 ピンク看板にぶつかり、

 キャバの呼び込みにぶつかり、

 たちんぼ外人に袖をひっぱられ、

 どこだ、どこにいるんだ。

 どん!

 「どこみてんだよ!」

 やべ、Vシネ系の育ちの悪そうな、目つきも悪いオヤジが、

 暴力オーラで、私を威圧する。

 だが、ここで、負けるわけにはいかない。

 何故なら「かっぽちゃん」の「黄金水!」が、

 待っているのだから。

 などと、抵抗する暇もなく、暴力オヤジの右拳が、

 私の左目に食い込んだ。



 「★」

 顔面に、火花が散って、私は、倒れていた。

 暴力オヤジの姿はもうない。

 私は、腰を起し、左目に食い込んだ、「かっぽ眼がね」を

 調整しなおした。

 「★」

 なんだ、このマークは?

 血!

 点々とどこかに、続いている。

 月一回の女王様?

 猛り狂う「かっぽちゃん」?

 もしや、

 月一回の生理!
 
 「かっぽ眼がね」を外すと、

 その血痕は、消えた。



 SM倶楽部「かぽかぽ」。

 歌舞伎町の外れ、

 韓国人や中国人が、

 雑居する古びたマンションの8階に、

 この店はあった。

 「かっぽレンズ」が、

 「かっぽ」の血を検知し、

 「★」を追ってきたら、

 たどり着いたのだ。

 ベルを押すと、しばらく、間を置いて、

 鍵を外す音が響き、

 東南アジア系の男が、出てきて、

 私は、中に、通された。

 前金で、福澤さん7枚と別れを告げた私は、

 コンクリが、打ちはなしの、

 電気ケーブルも、むき出しの、

 工事途中な一室で、

 かれこれ、30分も待たされている。

 グンゼの白ブリーフに、履き替えさせられ、

 パンツ一丁のまま、後ろ手に、手錠をはめられて、

 正座したまま、待っているのだ。

 もしや、すでに、放置プレイが始まっているのか!

 そりゃ酷だよ、

 「かっぽちゃん」

 とつぶやくと同時に、電気が消え、

 人の気配と同時に、私は、鞭で打ちつけられた。



 ぴし!ぴし!ぴし!ぴし!ぴし!

 ぴし!ぴし!ぴし!ぴし!ぴし!

 痛いだけだ。

 だれだ、SMなんて、つまんねぇプレイ考えたやつは!

 だけど、だけど、これは、

 「かっぽちゃん」の愛の鞭!

 私は、苦痛を快感に、変えるべく、

 脳内回路のつなぎ変えを念じた。

 どんどん、痛みだけが増し、

 しかも、痛みが頂点に達した時、

 突如、無感覚が、やってきた。

 「HEAVEN’S DOOR」

 そのあと、鞭打ちの一回一回が、

 快感に変わったのは、いうまでもない。

 「かっぽちゃん、言葉責め、お願いします」

 私は、プレイも、終盤に差し掛かり、

 パンツを脱がされ、冷たいイチジク浣腸が、

 直腸に、特異な体験を繰り広げている瞬間、

 おそれ多くも、直訴したのだ。

 「WHAT?」



 きづくと、私は、歌舞伎町のゴミ捨て場に、捨てられていた。

 背中は鞭打ちで、ぼろぼろ、

 浣腸が、今になってきいてきたのか、

 グンゼから、液状うんこが、ひっきりなしに、

 流れ出ている。

 私は、その女王、アメリカ女に対し、逆上し、

 本格的SM倶楽部での基本ルール破り「女王様強姦」を企て、

 奥でまってた屈強な異国のお兄さんたちに、ボコられて、

 パンツ一丁で、打ち捨てられていた。

 もうすぐ、夜があける。

 空が、ピンク色に、白み始めた。

 そもそも、ブログ界の女王「かっぽちゃん」に謁見する企て自体が、

 分不相応な考えだったのかもしれない。

 う。

 「きゃー」

 腹に激痛が走る。

 「あ、ごめんなさい」

 女に、踏まれた。

 「大丈夫ですか」

 声が出ない。

 「うんこ、もれてますよ」

 見あげると、ぼやけた視界に、輪郭が浮かぶ。

 「救急車、呼んできますね」

 待て、まだ、行かないで。

 力が、つきて、顔が地面に落ちる。

 見ると、そこには、スニーカー。

 私は、足に、手をかけた。

 かっぽちゃんは、

 比類なきスニーカー好きとして、知られている。

 「きゃー」

 がす!

 がす!

 顔面に、ローキックをかまされて、

 私は、鼻血を垂らし、失神したまま、

 救急車で、運ばれたらしい。

 女は、走って、逃げたが、

 救急車は、呼んでくれたようだ。

 私の手には、スニーカーが、片っぽだけ、残されていた。

 寝心地の悪い鉄板のような、救急病院のベッドで、

 スニーカーを眺めた。

 カカトの裏には、「kappo」の文字が、

 サイペンの黒で滲んでいた。

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